全世界限定3000台 ZenFone6 Edition30 2024年長期レビュー
要旨
ASUSが2019年5月に発表した「ZenFone6」はまさしくASUSを象徴するスマートフォンとなりました。そんなZenFone6の更に限定品である「ZenFone6 Edition30」を2024年の今、敢えてレビューしていきます。
ZenFone6が発表された2019年はASUSの創立30周年となる節目の年であり、機を同じくしてASUSのスマートフォン部門は従来の「薄利多売」「様々なバリエーションモデルでニッチな需要に対応」という方針からハイエンドに特化する方針へと改めました(TAMURA 2018)。ZenFone6に搭載された180°回転するFlipカメラは、まさしくこれまでの方向性から一転、ハイエンドへの注力を示す象徴といえるでしょう。レーザーAFを搭載した「Laser」シリーズ、大容量バッテリーを搭載した「Max」シリーズ、自撮りに特化した「Selfie」シリーズ、ハイエンドモデルである「Deluxe(Pro/Z)」等、様々なユーザーにささるラインナップを提供してきたZenFoneシリーズのほぼすべての要素1がこのZenFone6には詰め込まれています。まさしくこれまでのZenFoneと、そしてこれからのZenFoneを体現するASUS渾身のプロダクトが、このZenFone6なのです。
背景
ZenFone6 Edtion30は、ASUSの創立30周年を記念し、全世界で合計3000台のみ発売された限定モデルであり、発売から5年が経とうとしているスマートフォンです。
そんなスマートフォンを今更レビューするのは、これが私にとって大切な一台だからです。言ってしまえば、単なる私のこだわりですが、だからこそ、リニューアルしたPottal-Portal 3.0 のトップバッターは、愛するASUSの、しかも特別なモデルであるZenFone6 Edition30しかあるまいと思いレビューをすることにしました。 世にも珍しいカメラが180°フリップするこのスマートフォンですが、2019年のZenFone6から始まりZenfone8 Flip(2021年)で終わってしまったモデルであり、しかも今回レビューするのは全世界で3000台のみの限定モデルということで、おそらく誰にも需要のない記事とはなってしまいますが、私が書きたいから書く、そんな最初からこだわりの詰まった記事を最後までお楽しみいただければ幸いです。
What’s this?
- メインカメラが180°フリップするZenFone6の「ASUS 30周年記念」特別モデル
スペック
通常のスマホレビューであれば、カタログスペックを確認した後に、ベンチマークテストを連続で実行し性能を評価したり, オーディオ・ディスプレイについてレビューをしたり, バッテリー持ちや充電速度について検証したりしますが、2019年のスマホであり、しかも全世界に3000台しかない限定スマホに対してこれらを行う意義が見いだせないため、今回はレビューしません。
フォトレビュー
お蔵入りしていた当時の写真を引っ張り出した他、新たに撮り直すなどしました。
略式開封の儀
背面
前面
側面
項目別レビュー
ZenFone6 Edition30の良かったところやイマイチなところをざっくりと紹介したのち、筆者の語りたい項目を深掘りしていきます。
2024年視点でみたZenFone6の良いところ
- ◎: ノッチ・パンチホールなしの美しい全画面デザイン
- ◎: 自在なアングルをもたらすフリップカメラ
- ◯: 自撮りもメインカメラと同等の画質で撮影可能
- ◯: 大容量バッテリーかつ長年使えるバッテリーケア機能
- ◯: 3.5mm オーディオジャック搭載
- ◯: 迷いにくいレーザーAF
◎: ノッチ・パンチホールなしの美しい全画面デザイン
2024年現在、スマートフォンのディスプレイにはパンチホールやダイナミックアイランド、ノッチと形態や位置こそ様々なものの邪魔なインカメラが鎮座し、画面が欠けてしまうことが当たり前となってしまいました。せっかくカメラの画質が向上し、ディスプレイも色鮮やかになったというのに、綺麗な写真や動画に”穴”を開けてしまうのは、画竜点睛を欠くのではないかと思ってしまいます。 (何かを褒めるために、何かを貶めるのは好きではありませんが)ZenFone6は他のスマホとは違い、インカメラという概念が存在せず、ディスプレイが全画面なため非常に美しい外見です。
とは言え、Appleのように全ベゼル幅が均等というわけではないので、まだ高みを目指せる(妥協のあった)完成度だと思います。 ディスプレイ全体に関しては、別の項でレビューをするため、ここではあくまでデザインに関してのみの言及に留めますが、ディスプレイの角が丸く、しかも本体のアール(丸み)とあっていないのも気に食わないです。せっかくの全画面なのだから、ディスプレイをフルに楽しみたいと思うのは私だけでしょうか。
柔軟性のある有機ELではなく液晶ディスプレイを採用しているので、仕方がないと納得はできますが、残念であることには変わりありません。
四の五の言いましたが、それでも全画面ディスプレイであることの良さは揺るがないため、二重丸をつけました◎
◎: 自在なアングルをもたらすフリップカメラ
ミラーレスカメラの世界では、バリアングルやチルト式というモニターを自在に動かせる機構が定番となっています。ファインダーの代わりにモニターに被写体を映してカメラを自在なアングルに構えられるため、大胆な構図をとれることが人気の要因のようです。 ZenFone6も(モニターではなく)カメラ機構を180°フリップさせられることから、それと似たようなことを行えます。
(ASUS 2019)より筆者撮影及び引用
例えば、猫ちゃんと同じ目線の写真をスマホで撮影する場合、普通のスマホであればスマホを地面近くに(しかも垂直に)構え、厳しい体勢でシャッターボタンを押さなければなりませんが、ZenFone6であれば持ちやすい体勢でスマホを構え、カメラをフリップさせることでらくらく撮影が行えます(図 9)。
◯: 自撮りもメインカメラと同等の画質で撮影可能
筆者は自撮りをしませんが、ZenFone6はメインカメラが180°フリップするという仕組みのため、メインカメラ(いわゆる外カメ)と同等の画質でディスプレイを見ながらの自撮りが行えます。
(自撮りをするシーンでフォーカスに迷うことがあるかは不明ですが)メインカメラ同等のフォーカスが使えることや、夜間の乏しい光源でも綺麗に撮影できることが謳われており(ASUS 2019)、実際、筆者が試した限りでは最も綺麗に自撮りが撮れるスマートフォンでした。
「でした」とある通り、今では折りたたみスマホを用いて、メインカメラとサブディスプレイを用いた自撮りが(おそらく)最も綺麗に撮れる自撮りだと思うので、自撮り最強スマホとしての役割は他機種に譲ることになりました。
◯: 大容量バッテリーかつ長年使えるバッテリーケア機能
ZenFone6は5000mAhの大容量バッテリーを搭載し、なおかつ低速充電や80%(あるいは90%)までの充電制限機能、充電スケジュール機能といったいわゆるいたわり充電機能を備えているため、バッテリーサイクルを長く保つことができ、製品寿命を長くすることが可能です。 もともと、バッテリー容量が大きいためバッテリーが劣化しても比較的影響は軽微に抑えられる機種ではありますが、バッテリー劣化を抑える上記の機能により、発売から5年が経とうとしていますが、今でも普通に使うことが出来ます。
バッテリーより先にOS更新やセキュリティーアップデートの方が先に期限を迎えてしまいましたが、2回のOSアップデートを経てAndroid11まで適用できたため、普段使いで困ることはないでしょう(実際、OSが原因の足切りを経験したことはまだありません)。
◯: 3.5mm オーディオジャック搭載
ケーブルが煩わしいためBluetoothヘッドホン・イヤフォンに乗り換えて久しいですが、それでもやはり3.5mmオーディオジャックはあると嬉しいです。 また、ZenFone6は有線イヤフォンをアンテナにしてFMラジオを受信できるため、いざという時に安心です。もっとも、受信できる周波数帯は87.5~108.0MHzまでなので、筆者の聞きたい局(NHK-FM; 82.5MHz)は聞けないのですが。
◯: 迷いにくいレーザーAF
一昔前のスマートフォンでは、レーザー光を用いたレーザーAFが一般的でした。しかし、近年ではパッシブAF――特にイメージセンサー側での像面位相差AFやDual PDの台頭もあり、専用の機構を必要とするレーザーAFは逆風に曝されています。また、同じアクティブAFの世界でも、より広いカバーエリアを持つToFセンサー(小山 2020, 田中 2020)に取って代わられてしまい、本機種が出た2019年においてレーザーAFは風前の灯火といった状況にありました。
余力があれば後日、検証動画を追記という形でアップロードしますが、ZenFone6のAF性能は良好です。
ガラス越しに撮影する, 指でランドルト環(視力検査のような閉じてない輪っか)を作りその間を覗かせるといった意地悪をしない限り、レーザーAFは迷うことを知りません。 ちなみに、前者はガラスでレーザーが反射されてしまい正しく測位が出来ず、後者はレーザーが指で作った輪の間を通過してしまい後景にピントが合ってしまいます。
ZenFone6 Edition30ならではの良いところ
◎: “Zen”を象徴するスピン加工と美しく象られたASUS30周年ロゴ
一昔前のASUS製品、特にZenを冠するモデルには必ず、Zen(禅)を象徴するスピン加工(サーキュラー仕上げ)が施されていました(シンシア 2014)。 ZenBook3やZenFone3, ZenWatch3のような全面にそれを押し出したモデルだけでなく、例えばZenFone2のようにワンポイントであしらったものや、ZenFoneARのように半ばイースターエッグのように目を凝らして探さないと分からないものまで様々でしたが製品のどこかしらには禅の精神が宿っていました。 ところが、通常モデルのZenFone6(そしてそれ以降のモデル)には、どこに目を凝らしてもそれがないのです。その傾向はZenBookにも見られるのですが2、本筋から外れてしまうのでとりあえず割愛するとして、通常モデルのZenFone6には見られないZenの象徴が、ASUS30周年を記念したZenFone6 Edition30には見られてとても嬉しいというだけの話です。
また、ASUS30周年を記念して作られたロゴマークも特徴的です(図 13)。このロゴマークは「↑」矢印, 「人」, 「♡」をモチーフに、技術革新・デジタルライフによる向上, すべては人から始まるという思いやり, 喜んでもらう・使ってもらうという喜びを込めてデザインされたものです(ASUS JAPAN 2019, Jenny 2019)。
(ASUS Design Center 2019a)より筆者引用
現在では、ASUS30周年記念ロゴではなく、“A” monogram(Aモノグラム)としてZenfone10(図 15 (b))や新しいZenbook(図 15 (a))に採用されるようになりました(藤沢 2022, ASUS Design Center 2019b)。
◯: 今でも通用するRAM12GB, ストレージ512GB構成
ZenFone6の通常版は、6GB/128GB, 8GB/256GBというラインナップでしたが、限定モデルであるZenFone6 Edition30は12GB/512GB構成(RAM/ストレージ)です。
SoCには2019年当時のハイエンドチップであるQualcomm® Snapdragon™ 855を搭載しているため、2024年現在でも十分快適に動作します。 流石に3Dゲームなどを最高設定でプレイするのは厳しいですが、設定を落とせば普通に動作するため、体感としてはミドル~ミドルハイといったところでしょうか。 ブラウジングなども(リフレッシュレートが60Hzなことに目をつぶれば)快適に行えますし、ノッチ・パンチホールがないことで動画の視聴も快適です。
ZenFone6のイマイチなところ
△: 机に置いた状態で生体認証によるロック解除できない
生体認証は指紋認証及び顔認証に対応していますが、指紋センサーは背面にあり顔認証も(インカメラを搭載しないフリップカメラという都合上)カメラをフリップさせる必要があるため、机に置いたままではカメラをフリップ出来ずに使えません。 机に置いたままロックを解除するにはパスコードやパターン入力をする必要があります。
これの悲しいところは、ZenFone6に来た通知を確かめる際にプライベートな内容の通知は詳細が表示されないため、いちいち机に置いたスマホを手にとって通知をアンロックする必要があるという点になります。もちろん、通知設定を変更しプライベートな内容であってもロック解除を求めないようにすれば済むのですが、普通のスマホなら机に置いたままスマホをタップしてカメラを見つめるだけで詳細が分かるのに、ZenFone6ではできないというのは運用でカバーする必要があるという点でデメリットであると言っていいでしょう。
△: デリケートなフリップカメラ
ZenFone6はカメラを180°フリップ(回転)させるという機構(図 17)のため、普通のスマホに比べてカメラはデリケートなことは事実です。 もちろん、ASUSもそれは承知しているため、いくつもの安全機構を設けて故障を防いでいます。 例えば、フリップカメラを使用時に落下した場合、そのままでは飛び出たカメラに大きなダメージを受けてしまいますが、ZenFone6は落下を検知すると自動でカメラを元の位置に戻し、ダメージを最小限に抑える仕組みが備わっています(図 16)。
「『A部ツアー 2019』 sponsored by ひかりTVショッピング」にて筆者撮影
△: 防水・おサイフケータイ非対応
今でこそ、ASUSのZenfoneシリーズは防水・おサイフケータイに対応していますが3、当時のASUSは初代ROG Phone以外防水性能を持ったスマートフォンを作っていませんでしたし4、フリップカメラという可動域ができる仕様上、防水性能をもたせることはとても難しいでしょう。また、凹字型の限界までコンパクトに設計された基板(図 17 (e))に日本向けのハードウェアローカライズをする余裕があるとは思えません。もちろん、小型端末であってもおサイフケータイに対応しているスマートフォンはいくらでもあります。例えばZenfone8以降のZenfoneシリーズは小型ですし、Unihertz Jelly 2やRakuten Miniなど3インチクラスの超小型端末でもおサイフケータイ対応の例はあります(図 18)。 しかし、おサイフケータイへの対応はただNFCアンテナをFeliCa対応のものに載せ替えればいいというものではないため、NFC搭載のスマートフォンと同じ感覚で対応できるものではなく、おサイフケータイ専用の設計で作るか、あるいはFeliCaモジュール等を追加できる余裕をもたせた基板設計が必要になるはずです。
ZenFone6は従来のような豊富なラインナップで薄利多売をする方針から一転、ハイエンドに特化するという方針(TAMURA 2018)を受けて作られた最初のスマートフォンですので、そのようなハードウェアローカライズをする専用ラインを設けることが出来なかったのでしょう。
そのような背景を理解しているため、防水・おサイフケータイ非対応に不満を言うつもりはありませんが、仕方のないこととは言え、デメリットであることには違いありませんので△とさせていただきました。
✗: USB2.0 & 映像出力不可
ZenFone6 Edition30は512GBの大容量ストレージを備えているので写真や動画をたくさん収めることができます。 しかし、撮った写真をバックアップする際にネックになるのが、USB2.0という点です。もちろん、今はクラウドバックアップという手もありますが、筆者としてはUSBを繋いでサクッとHDDなりSSDなりにバックアップしておきたいです。そうなるとこのUSB2.0という仕様がネックになります。 まあ、ZenFone6はMicroSDカードに対応しているため、写真を最初からMicroSDカード保存にしておくことでもっと手軽にバックアップは撮れるので許しますが… (MicroSDカードの転送速度も大したことはありませんが、スマートフォンをUSB接続でパソコンに繋ぐ時の不安定さやその間ロクに使えない不便さに比べたら全然マシです)
また、PCに転送せずとも、例えばテレビなどの大きなディスプレイに繋いで写真を大きな画面で確認したい, 楽しみたいという時にネックになるのが、映像出力(Alt Mode)に対応していないため、USBハブなどに繋いで手軽に映像出力できないのもイマイチです。
カメラについて
ZenFone6はメインカメラの他に超広角撮影用のセカンドカメラを搭載したデュアルカメラ構成です。メイン(広角)+望遠という選択肢も普通のスマホであればありですが、フリップカメラとして自撮りをすることを考えると、自撮りで望遠を使うことはなくとも、超広角という広い画角を使って複数人で撮ったり、景色をダイナミックに収められるため、メイン(広角)+超広角という構成の方が理にかなっています5。
メインカメラには、4800万画素のSony IMX586イメージセンサー(\(\frac{1}{2}インチ\))を搭載し、レンズはF値1.79。 超広角カメラには、1300万画素のイメージセンサーに、125°をカバーする超広角レンズを採用、F値は2.4となっています。 また、AF機構としてレーザーAFを採用し、メインカメラの2x1 OCL PDAFシステムと合わせて正確で高速なフォーカシングを可能にしています。
メインカメラのレンズがF1.79と筆者の好みよりやや暗めなのは残念ですが、被写界深度が深くボケにくいというメリットもあります。様々なアングルで前景、中景、後景を意識せず1つのまとまった絵として仕上げられるのは魅力かもしれません。特にスマホでテーブルフォト(飯テロ写真)を撮る場合、被写界深度が浅いと料理の一部にだけピントが合ってしまい、意図した距離で撮影できないことがあります。もちろん、最近のスマホは2倍デジタルズームくらいには余裕で耐える解像度がありますので、離れて撮影しボケを抑えクロップするというのもありですが、簡便に飯テロ写真を撮りたい際には、大口径レンズというのは少々考えものです。 また、ボケを際立たせたい際には、ポートレートモードで擬似的に被写界深度を狭めて立体感のある写真を撮ることもできます(F0.95~22までシミュレート可能)。
作例
ZenFone6 Edition30で筆者が撮影した作例です。一部写真のGPS情報を削除した以外は撮って出しです。
その他、筆者がZenFone6で撮影した写真について気になる方はTwitterを御覧ください。
使い勝手について(筆者の使い道について)
フリップカメラが特徴のハイエンドスマホであるZenFone6ですが、その中でもプレミアムモデルということで12GB RAM/512GB ストレージを搭載しており、2024年現在でも普通に使えるといった印象です。むしろ、尖ったカメラ機能の方が時代の速度についていけず、メインとして外に持ち出すカメラ専用機というより普段使いのサブスマホとしての利用の方が適しています。
もちろん、スマートフォンにハイエンドなスペックを求めない方も大勢いるでしょう。ミドルレンジで十分という方であれば2024年であってもZenFone6 Edition30はミドルハイクラスの体験を提供できます。ディスプレイが60Hzなのがミドルハイとしては厳しいかもしれませんが、それ以外は不満なく使えるはずです。 しかし、通常モデルのZenFone6ならともかく世界に3000台しかないこの機種をわざわざサブスマホとして買う人はどこにもいないでしょうから、サブスマホとしての使い勝手についてレビューすることに意義があるか極めて怪しいところであります。余談ですが、型落ちとなったハイエンドスマホを中古で安く購入して、ミドルレンジな価格でメインスマホ, あるいはサブスマホとして使うのであれば、ZenFone6よりも(ASUSスマホであれば)ROG Phoneシリーズの方が向いています。
スマホカメラの進歩はまさしく日進月歩であり、流石に2019年のスマートフォンでは最新機種には叶いません。ZenFone6が持つフリップカメラ――メインカメラがそのままインカメラになる――という強みを活かして自撮り番長として戦うことは可能だと思いますが、筆者が自撮りをしないので断言は出来ませんし、自撮りガチ勢は最新のiPhoneか、折りたたみスマホのメインカメラを活用していることでしょう。(折りたたみスマホであれば、メインカメラのそばにサブディスプレイが付いているため、映りを確認しながらメインカメラで撮影が可能です。)
もちろん、ZenFone6は自撮り以外にも、自由なアングルで撮影ができるという強みがあるのですが、2019年当時ならともかく2024年にわざわざ5年前のスマホを持ち出して、新たな視点を求めるかと言われると、筆者はノーです。それに5年も使っていると、このスマホで撮れる画角が頭に入っているので、ディスプレイを注視せずとも、このアングルから写せば何が出てくるかというのが分かってしまい、結果としてフリップカメラを動かすのではなくスマホを動かして撮ってしまいます。
また、筆者の持つモデルは全世界限定3000台という特別なものであるため、おいそれと外で使えません。そのため、今は野外に持ち出さず、家で大切にデスクトップPCのWebカメラとして活用しています。 充電を80%までに制限できること、スマホホルダーで固定した後もフリップカメラで微調整が可能なことがその理由です。
その他、考えられる用途としてはYouTube専用機でしょうか。発色とコントラストに優れた有機ELではないため、Netflixなどで映画を楽しむといった映像美を求める用途にはやや物足りませんが、YouTubeで動画を垂れ流すのであれば十分ですし、明るさの面では液晶の方が有利です。
スピーカーは2つ付いていますが、ROG Phoneシリーズや最新のXperia 1/5シリーズと違い、デュアルフロントスピーカーではないため、(横持ちにした際)左右のスピーカーからバランス良く音を楽しむことは出来ません。そのため、映画のように音響にこだわった作品を視聴するのには向きませんが、YouTubeで何となく動画を流すという用途では気になりません。
まとめ
ZenFone6 Edition30は発売から5年が経とうとしても色褪せない最高のスマートフォンである――と言いたいのが本音です。今は後から無理なく写真の補正を行うことも難しくありませんし、生成AIの台頭により、画面に収まらなかった絵を生成し拡張することさえできる時代ですが、アングルというのは、そう簡単に補正を行うことはできません。そういった意味では、自由なアングルで手軽に撮影ができるZenFone6のフリップカメラは最新機種にはない強みを持っています。しかし、いつも凝ったアングルで写真を撮るわけではありません。カメラ専門スマホの中でもアングルにこだわりたい時だけZenFone6を持ち出すというのは想定として厳しいでしょう。また、アングルというのは「気付く」か「気付かない」かです。スマートフォンはカメラに比べれば小さいため、アングルの調整はしやすいので、他のスマホでは撮れない――言い換えれば、ZenFone6でしか撮れないアングルというのはありません。やはり5年という歳月は大きく、特に昨今のハイエンド機種はカメラにかなり力を入れていますから、こうして条件を揃えてしまうとZenFone6は色褪せてしまいます。
しかし、第一線で戦えなくても、使えないわけではありません。サブスマホとしてのセカンドライフは十分におくれます。もちろん、サブスマホとしてわざわざ買い足すのは本末転倒ですが、第一線から退かせて使うという意味では問題がなく、むしろお釣りが出るくらいであるということは、ZenFone6ユーザーなら十分に理解していることでしょう。バッテリーケア機能で劣化の少ない5000mAhのバッテリー、MicroSDカードと2つのnanoSIMをさせるトリプルスロット仕様、5年前のハイエンドSoC、明るい液晶、どれをとってもサブスマホとしては十分過ぎます。 問題は、ZenFone6ユーザーならそれを分かっているのでこの文章を届ける対象がいないことですが、もともと虚空に向かって熱弁を振るっているようなブログなので…まあいつものことです。それに、世界にたった3000台しかないZenFone6 Edition30のレビューですから、今更な話です。だとすれば、筆者にできることはただ一つ。
ZenFone6 Edition30は色褪せてなお美しい、そう惚気けることだけでしょう。