Anker Prime Power Bank 27650mAh 250Wモデル レビュー

レビュー
モバイルバッテリー
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おすすめ記事
寸法もバッテリー容量も取り回しの良いギリギリのサイズを保ちつつ、USB-C1, C2で同時に140W, 100Wを出力可能というハイスペックな仕様で重さや細々とした欠点をすべて帳消しにする最強のモバイルバッテリー。
著者

Pottal

公開日

2024-04-15

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要旨

Anker Prime Power Bank(27650mAh 250Wモデル)を購入したためレビューします。本機種はUSB-C1ポート単体出力140W, USB-C2ポートとの同時使用時にもUSB-C1は140W, C2は100Wというハイスペックな仕様のせいか、筆者の検証した限り、TypeCポート(USB-C1,C2)のみを使っている場合は、再ネゴシエーションによる瞬断(瞬停; 瞬間停止)が起こらないという地味に嬉しい仕様になっています。また、USB-C1とC2の同時入力にも対応しており、最大170W(39分)で本機を充電することが可能です。100W出力可能なACアダプターないし充電器を2台持っていることが前提にはなりますが、27650mAh(99.54Wh)という機内持ち込みギリギリのサイズ(ANA)のモバイルバッテリーが40分かからずに充電できるのは素晴らしいですね。500mLのペットボトルより小さく、そして665gと僅かに重い程度なので自分としては十分許容範囲です。攻守ともに最強の大容量モバイルバッテリーが自販機のペットボトル程度の感覚で持ち運べるなんていい時代になったなぁと感じます。なお、筆者は2024年4月からニートになったのでモバイルバッテリーを使う機会はないのですが…

背景

以前使っていたCIOのモバイルバッテリー『SMARTCOBY 20000mAh 60W』が壊れたので、新しいモバイルバッテリーを探していました。CIOのこのモバイルバッテリーは、3A(60Wまで対応)のケーブルに対して5AのPDOを出力を通知するというUSB PDの仕様に違反する代物(@Hanpenblog 2021)だったため、早いところ買い替えたかったのですが、どうせ買うなら、中途半端なスペックのモバイルバッテリーではなく最強のモバイルバッテリーが欲しいと思っておりました。

2023年の夏に「Anker Prime Power Bank (27650mAh, 250W)」が発表(アンカー・ジャパン株式会社 2023a)されてから、発売予定である「2023年秋ごろ」を一日千秋の想いで待ち続けていたのですが、「2024年1月発売予定」、「2024年春ごろ発売予定」と延期に延期を重ね、2024年の2月2日にひっそりと発売されていたことに3月まで気付かず、値引きされてないものをAmazon新生活SALEで買いました。(Ankerの新商品は一定数量までは値引きされて販売されていることが多く、この製品もセールでは19900円だったのですが、正規価格の24990円で買うことになりました)

What’s this?

単ポート140W, 2ポート240Wの出力ができ、170Wで本体も充電可能という攻守最強の27650mAhモバイルバッテリー

開封の儀

図 1: 外装

ポーチ, 140W対応ケーブル(60cm), 説明書などが付属
図 2: 付属品
(a) 片側にはAnkerロゴが彫られている
(b) MAX 140Wという印字 実際には50V5A(250W)まで対応
(c) 付属ケーブルは50V5A(250W)まで対応
図 3: 付属ケーブル
AVHzY CT-3を用いてケーブルを調べたところUSB2.0で50V5Aまで対応

図 3 (b)の通り、この付属ケーブルには「MAX 140W」という印字があります。しかし、AVHzY CT-3を用いてケーブルを調べたところ実際には50V5A(250W)まで対応しています。また、USB PD EPR対応ケーブルは(たとえソース側が140Wまでであろうと)50V5Aに対応していなければなりません(SpecWerkz & Saunders 2023)。わざわざMAX 140Wと印字している意味がわかりません。詳しくは後述します。

(a) 正面
(b) 背面
(c) 左側面
(d) 右側面
(e) 上面
(f) 底面
図 4: Anker Prime Power Bank 27650mAh 250W本体
図 5: 重量は実測666g(公称値 約665g)
図 6: 500mLペットボトルとサイズ感の比較

定格表示

  • Anker Prime 27,650mAh Power Bank (250W)
  • Model/品番: A1340
  • Battery Capacity: 3950mAh 25.2Vdc/99.54Wh
  • Cell/内蔵電池: 3950mAh*7pcs
  • 定格電圧: 5Vdc
  • 定格容量: 15500mAh
  • USB-C1/C2 Input/入力: 5V⎓3A / 9V⎓3A / 15V⎓3A / 20V⎓5A / 28V⎓5A
  • Chargin Base Input/入力: 21.5V⎓4.65A
  • USB-C1/C2 Output/出力: 5V⎓3A / 9V⎓3A / 12V⎓1.5A / 15V⎓3A / 20V⎓5A / 28V⎓5A
  • USB-A Output/出力: 5V⎓3A / 9V⎓2A / 10V⎓6.5A / 12V⎓1.5A
  • Total Output/合計出力: 250W Max
  • Anker Innovations Limited
  • Made in China
  • PSEマーク: 丸形 / アンカー・ジャパン株式会社

スペックについて

カタログスペックではなく、実測した性能はこちらを御覧ください。

表 1: スペック表 (アンカー・ジャパン株式会社 2024)より筆者引用
項目 スペック
サイズ 約162 x 57 x 50mm
重さ 約665g
入力 USB-C1 / C2 入力:5V⎓3A / 9V⎓3A / 15V⎓3A / 20V⎓5A / 28V⎓5A (最大140W)
専用充電スタンド (別売り):21.5V⎓4.65A (最大99W)
合計最大入力:170W
出力 USB-C1 / C2 出力:5V⎓3A / 9V⎓3A / 12V⎓1.5A / 15V⎓3A / 20V⎓5A / 28V⎓5A (最大140W)
USB-A出力:5V⎓3A / 9V⎓2A / 10V⎓6.5A / 12V⎓1.5A (最大65W)
※USB-Aポートから最大65Wの出力にはOPPO対応機器と専用ケーブルが必要です
PowerIQ 出力 PowerIQ 3.0 (Gen2) 対応
合計最大出力 250W
搭載ポート詳細 3 (USB-C × 2、USB-A × 1)
バッテリー容量 27650mAh
パッケージ内容 Anker Prime Power Bank (27650mAh, 250W)、USB-C&USB-Cケーブル (0.6m) 、取扱説明書、24ヶ月保証 + 6ヶ月 (Anker Japan 公式サイト会員登録後) 、カスタマーサポート
図 7: 1ポート最大140W, 2ポート最大170Wで本体に充電可能
(a) 3ポート同時利用時
(b) 2ポート同時利用時
(c) 1ポート利用時
図 8: (アンカー・ジャパン株式会社 2024)より筆者引用の出力表

良かったところ

  • ◎: USB-C1, C2の同時利用でも240W(140+100W)出力可能
  • ◎: (少なくとも筆者の試した限り)USB-Cのみの利用では瞬断しない
  • ◎: ディスプレイでバッテリー残量・入出力が確認できる
  • ◎: アプリ経由でUSB-C1ポートの入出力を切り替えられる
  • ◎: 99.54Wh(27650mAh)という機内持ち込みに制限がないギリギリの容量
  • ◎: 39分で満充電可能
  • ◯: スマートフォンから音を鳴らして充電器を探せる(要Bluetooth接続)
  • ◯: 出力はUSB PD PPS対応
  • ◯: パススルー充電対応

◎: USB-C1, C2の同時利用でも240W(140+100W)出力可能

残念ながら、筆者の手元にはUSB PD 140Wや100Wを要求するガジェットがないため検証はできませんが、カタログスペック上はこのAnker Prime Power Bank 27650mAh 250WはUSB-C1ポートで140W出力しながらUSB-C2ポートでも100Wの出力を行えます。

ゲーミングノートパソコンなどは100W以上の出力を持つACアダプターが同梱されているものが多いですが、それらは専用のポートを要し、USB PDは100Wまで対応という場合が多いため、現状140Wというフルパワー充電を行う相手が少ないという残念な状況です。手っ取り早く140W出力を試すには、もう一台Anker Prime Power Bank 27650mAh 250Wを用意しなければなりません1

◎: (少なくとも筆者の試した限り)USB-Cのみの利用では瞬断しない

少なくとも筆者の試した限りでは、USB Standard-A(以下USB-A)を使わない限り(=つまりUSB-C1,C2ポートだけを使う限り)、デバイスを接続しても再ネゴシエーションに伴う瞬断(瞬停: 瞬間停止)は確認されませんでした。これは、Anker Prime Power Bank 27650mAh 250WがUSB-C1ポートで140W出力しながらUSB-C2ポートでも100Wの出力を行えるので、PDO(供給できる電力のリスト)の再設定が必要ないからだと考えられます。 ただし、USB-C2ポートで140W充電をしている際にUSB-C1に100Wを要求した場合は瞬断が起こるかもしれません。(逆では起こらないと考えられます。)

筆者の試した限り、USB-Aを使わない限り瞬断は確認できませんでした。裏を返せば、USB-Aを使用すると一定の条件下で瞬断が生じました。早い話がUSB-C1(もしくはUSB-C2)とUSB-Aを使用している時に余っているUSB-C2(あるいはUSB-C1)を使用するとUSB-Aポートで瞬断を起こします。 バッテリーを搭載せず、USB給電で駆動する(=つまり、再ネゴシエーションによる瞬断が致命的になる)デバイスというのは多くの場合、USB-Aを使用していることが多い(ような気がする)ので2、この点には留意する必要があります。

◎: ディスプレイでバッテリー残量・入出力が確認できる

意外と便利だったのが、ディスプレイによるバッテリー残量や入出力の詳細表示でした。

図 9: 充電状況をリアルタイムで確認可能

バッテリー残量はともかく、入出力のW(ワット)や電流・電圧が分かったところでユーザーがどうこうできるわけではありませんが、急速充電されていないことに気付けたり3、何より見ていて楽しいです。 また、あと何分くらいバッテリーが持つのか、あるいは(本機を充電している際には)何分くらいで100%まで充電されるかも分かります。

◎: アプリ経由でUSB-C1ポートの入出力を切り替えられる

本機は賢いので、スマートフォン等を充電する際に、充電するつもりが逆に充電されていてスマホ側のバッテリーが減っているなんてことは起こらないのですが、入出力の切り替え機能はあるに越したことはありません。(実際、レビューのためにモバイルバッテリーでモバイルバッテリーを充電する際には役立ちました) 筆者はUSB PD対応のノートパソコンを手放してしまったので確かめられないのですが、ノートパソコンを充電する際などはこうした自体が生じやすいのできっと役立つと思います。

◎: 99.54Wh(27650mAh)という機内持ち込みに制限がないギリギリの容量

ANAの「【国内・国際線/海外ツアー】リチウムイオン電池が内蔵された一般電子機器・モバイルバッテリーの取り扱いについて」というページには、

リチウムイオン電池(バッテリー)はワット時定格量が100Wh以下のものは機内へお持ち込みできます。お預けはできません。 リチウムイオン電池(バッテリー)はワット時定格量が100Whを超え160Wh以下のものは2個まで機内持ち込みできます。お預けはできません。

※ワット時定格量(Wh)の記載がないモバイルバッテリーが多く流通しております。

 ワット時定格量(Wh)が不明な場合には、機内持ち込み・お預け共に不可となります。

 ご搭乗前にワット時定格量(Wh)を事前にお調べいただくようお願いいたします。

という記載があります(ANA)

図 4 (f)に示した通り、本機には99.54Whとワット時定格量(Wh)の記載があり、なおかつ100Wh以下のため、制約なく機内に持ち込むことが出来ます(預け入れは出来ません)。トラベル用途にもぴったりのギリギリを攻めた容量に設定したのはナイスです。

◎: 39分で満充電可能

100W級のACアダプター・モバイルバッテリーを2台持っていることが前提となりますが、Anker Prime Power Bank 27650mAh 250Wモデルは充電器を2つ(USB-C1, C2ポートにそれぞれ)繋いで、最大170Wで急速充電が行え、公称37分で0%→100%まで充電することができます。 筆者が実際に測定を行ったところ、公称値に近い39分で100%まで充電できました(図 14)。 今回の測定では、29分(90%)時点で本機のバッテリー温度が46℃に達してしまったため充電速度に制限がかかってしまい、公称値である37分で100%充電することができませんでしたが、ファンの風を当てるなどして適切に冷やせれば達成できそうです。(他にも、USB電力メーターAVHzY CT-3の不調で瞬断が起き、電圧・電流の乱高下してしまった影響もあると思います)

充電時の発熱や、詳しい挙動はSection 8-1: 入力(バッテリーへの充電)についてにて紹介します。

◯: スマートフォンから音を鳴らして充電器を探せる(要Bluetooth接続)

Bluetoothで接続していないといけませんが、Anker Prime Power Bank 27650mAh 250Wモデルに搭載されているスピーカーから音を鳴らして、本機種を探すことができます。Bluetoothに接続していないといけませんが… 大事なことなので2回言いました。

地味に便利な機能ですが、Bluetooth接続していないと使えないので、部屋の中で探すくらいしか使い道がありません。AnkerはEufy Security SmartTrack Card (紛失防止トラッカー)を作っているので、やろうと思えばちゃんとした紛失防止機能を搭載することだって可能なはずなのに、どうしてこんな中途半端な仕事をするのか不思議でなりません。 せめて、最後に接続したときの(スマホの)位置情報くらい残せれば、どこに置き忘れたのか見当が付きますが、そういったこともできません。

ですが、まあ無いよりマシなので一応「◯」をつけました。

図 10: Eufy Security SmartTrack Card (紛失防止トラッカー)

◯: 出力はUSB PD PPS対応

TypeCポート(USB-C1, C2)ポートからは4.5-21V⎓5A(22.5-105W)の範囲でUSB PD PPS出力が行えます。 USB PD PPSは充電電圧と電流をより細かく制御できる仕様で、充電されるデバイスへの電力供給の効率を高めることができます。

USB PD PPS自体は別に充電速度を直接高める規格ではないのですが、例えば筆者の手元にあるGalaxy S22 Ultraなどは、USB PD(60W)では「超急速充電」にはならず、USB PD PPS(65W以上)でないと「超急速充電」と表示されません。ちなみに5Aケーブルを接続すると同じUSB PD PPS(65W)充電器でも「超急速充電2.0」と表示され、より速く充電することが可能です。 Galaxy S22 Ultraの充電(入力)は45WまでなのでUSB PD(60W)であっても問題はないはずなのですが、USB PD PPSでないと本気を出してくれないようです。 これは何も筆者の手元にある端末だけでなく、Galaxyシリーズ全体がそういう仕様なようです(山田 2019)

やや本筋から逸れてしまいましたが、USB PD PPSであればUSB PD以上に効率良く(機種によってはより高速に)充電できるので嬉しい限りです。 願わくば、出力だけでなく「入力」もUSB PD PPSに対応し、本機種(Anker Prime Power Bank 27650mAh 250Wモデル)を急速充電できれば嬉しいのですが… この話については、デメリットセクションの「✗:充電時の極端な温度制御」にてしたいと思います。

◯: パススルー充電対応

パススルー充電、つまり本機種を充電しながら本機種からの給電(接続デバイスへの充電)が行えます。 中途半端なパススルー対応機種だと、接続しているデバイスへの充電が終わらない限り自身への充電は行えないなんてことがありますが、本機種は、接続デバイスへの給電をしつつ余った電力で自身への充電も行えます。 \[ 自身への充電電力 = 本機種への入力電力 - 接続したデバイスへの出力電力 \] となるので、例えば本機種に100W電源を繋ぎつつ30Wで接続したデバイスへの給電を行った場合、70W余るのでその分を自身への充電に充てることができるというイメージです。

イマイチなところ

  • ✗: ディスプレイの盛り上がり
  • ✗: 指紋が目立つディスプレイ
  • ✗: 充電時のやや極端な温度制御
  • △: TypeAデバイスとの干渉を起こすポート配置
  • △: 付属ケーブルの意味不明な印字
  • △: (1つしかボタンがないので仕方がないとは言え)不便なUX

✗: ディスプレイの盛り上がり

見てください、この無駄に盛り上がったディスプレイを(図 11)。 物理的に傷が付きやすい凸型の形状です。むしろ少し周りを厚くしてディスプレイ部分を凹ませるべきでしょう。

図 11: ディスプレイが盛り上がっており傷が付きやすい形状

何を考えてこんな形にしたのか、理解に苦しみます。

✗: 指紋が目立つディスプレイ

モバイルバッテリーに何を望むことではないのかもしれませんが、ディスプレイ周りのガラスは指紋が目立つ仕上げとなっています。 美しくありません。

✗: 充電時のやや極端な温度制御

本機種を充電する際の仕様がピーキー過ぎます。本機種は、46℃以上でバッテリー保護のための充電制御を行うような挙動を見せるのですが、それまで(2ポート使い)160Wで充電していたところを、46℃で急に60Wに落とします。もしかするとさらに高温になればより入力を低下させるかもしれませんが、危険なのでこれ以上の検証は行っておりません。 46℃以上というのは、モバイルバッテリーにとって好ましくない温度で、Anker自身も

最近のバッテリーはある程度の条件下でもしっかりと機能するように設計されていますが、極端な環境下での充電はやはりバッテリーに負荷がかかります。特にリチウムイオン電池は熱に敏感で、バッテリーの温度が約45℃以上になると劣化が始まり、劣化が進むと蓄えられる電力が低下するため、バッテリーの寿命にも影響が出ます。一般的に約5℃~45℃の環境では問題なく充電ができますが、約5℃を下回る寒い環境下はバッテリーに好ましくない影響を及ぼします。バッテリーの保管や使用は、約5℃~45℃の範囲が適切です。 (アンカー・ジャパン株式会社 2022a)

としています。45℃までが適切な温度であるならば、45℃を超える前に温度制御をするべきであり、46℃になってから慌てて行うのは(無いよりマシとは言え)イマイチな気がします。42℃程度までは本来の充電速度で充電し、42~45℃で少しブレーキをかけ45℃を超えないようにし、46℃以上でさらなる充電制御を行うという方が賢明に思えます。 「最大170Wで充電可能! これにより37分で満充電」と謳うために敢えてギリギリまで充電制限をしないようにしているのではないかと穿った見方をしてしまいそうになりますね。実際、170Wで充電すると45℃を超え充電速度が制限されてしまい、公称値である37分は達成できませんでした(図 14)。

せっかく出力側はUSB PD PPSに対応しているのだから、本機種への入力もUSB PD PPSに対応し、発熱を抑えた充電ができるようになって欲しいものです。

△: TypeAデバイスとの干渉を起こすポート配置

どうしてこんな余計なことをしたのかわかりませんが、ポートの配置が旧モデルや下位モデルと変わっています(図 12)。

図 12: 旧モデルや下位モデルのポート配置

このせいで、TypeAポートに直接接続するタイプのデバイスではTypeCポートと干渉を起こしてしまいます(図 13)。

図 13: 幅広のUSB機器との干渉

どちらかと言えば、ポート幅を専有するこちらのデバイスの方が悪く、延長ケーブルを噛ませれば解決しますが、従来モデルや下位モデルのポート配置では起こらないため、余計なことをしてくれたなぁという悪印象を持ってしまいます。

△: 付属ケーブルの意味不明な印字

開封の儀で示した通り、本製品に付属するケーブルには「MAX 140W」という印字があります(図 3 (b))。しかし、AVHzY CT-3を用いてケーブルを調べたところ実際には50V5A(250W)まで対応しています。また、USB PD EPR対応ケーブルは(たとえソース側が140Wまでであろうと)50V5Aに対応していなければなりません(SpecWerkz & Saunders 2023)

3.11.1 Electrical Requirements

Extended Power Range cables have additional requirements to assure that these cables can deliver the full defined voltage and current range for USB PD EPR operation.EPR cables shall functionally support a reported 50 V and 5 A operation. The minimum functional voltage that a cable shall support is 50.9 V. The electrical components potentially in the path of VBUS in an EPR cable, e.g., bypass capacitors, should be minimally rated for 63 V. (SpecWerkz & Saunders 2023)

ケーブルとしては正しくUSB PD 240W(USB PD EPRの上限は240W)まで対応しているのにもかかわらず、まるでケーブルが140Wまでしか対応していないような表記は誤解を招き不適切であると筆者は考えます。

△: (1つしかボタンがないので仕方がないとは言え)不便なUX

本製品の右側面にはボタンが1つ付いており(図 4 (d))、これを押すことで画面の操作を行うことになります。ボタンは4方向に動いたりするわけではないので、クリック(単押し)か、素早くダブルクリック(2回押す)かで操作することになり、目的の画面にまで変遷し設定を変更するのが面倒です。幸い、Bluetoothのオンオフ以外の操作はアプリからも行えるので良いのですが…。

性能について

本製品(Anker Prime Power Bank 27650mAh 250Wモデル)への入力(充電)能力と、本製品からの出力(他のデバイスへの給電)能力について、詳しくレビューします。

入力(バッテリーへの充電)について

以下の表(表 2)の通り、本製品にはUSB TypeCでのみ充電を行えます。

単ポートで最大140W(28V5A)の充電が行えますが、筆者は100Wまでの充電器しか持っていないため、充電速度や発熱具合についてはレビューできません。

また、珍しいことにTypeCポートを2つ使って本製品を充電することが可能で、その場合は合計で最大170Wの電力で充電することができ、公称37分(実測39分)で0→100%までの満充電が行えます(図 14)。ただし、170W充電はバッテリーが55%以上まで充電された時のみ可能で、それまでは最大150W程度で充電されることを確認しています。

表 2: 入力(バッテリーへの充電)スペック
ポート スペック W数 備考
USB-C1 or USB-C2

5V⎓3A

9V⎓3A

15V⎓3A

20V⎓5A

28V⎓5A

15W

27W

45W

100W

140W

USB-C1 and USB-C2 170W バッテリー残量55%以上から有効

まず初めに、「最大170W充電で最短37分で満充電可能」という謳い文句を試すために、Baseus 100W PD 充電器CCGAN100CSBaseus PowerCombo Pro 100Wを用いて本製品を充電してみることにしました。

電流及び電圧を表示するだけのUSB電力メーターはいくつか持っているのですが、これを記録できるのはあいにくAVHzY CT-3 1台しか持っていなかったので、USB-C1ポート側の電力(電流・電圧)を測定しました。その結果が図 14です。また、Ankerアプリ側でのバッテリー温度の監視(図 15)とサーマルカメラを使っての充電器、本製品の温度も測定しました(図 16)。

結論から言うと、29分(90%)時点で本機のバッテリー温度が46℃に達してしまったため充電速度に制限がかかってしまい、公称値である37分で100%充電することができませんでしたが、それに近い39分で満充電が行えました。

Anker Prime Power Bank(27650mAh 250Wモデル)170W充電
AVHzY CT-3を用いてUSB-C1ポート側を筆者測定
電圧・電流の乱高下はCT-3による影響(アーティファクトではない)
図 14: Baseus 100W PD 充電器CCGAN100CSBaseus PowerCombo Pro 100Wを用いて170W充電をした様子(片ポートのみのため、最大80W)

図 15: Ankerアプリを使って充電状況とバッテリー温度を監視
スクショのタイミングで45℃と表示されてしまったが、90.69%時点で46℃に到達し、充電制限が始まった
(a) Baseus PowerCombo Pro 100W 48℃程度
(b) Baseus 100W PD 充電器 57℃程度
(c) Anker Prime Power Bank 52℃程度
図 16: サーマルカメラ(FLIR ONE Gen3)を用いての測定

図 16 (c)を見ると、発熱は端子の近くで顕著であり、50℃を超えていることが分かります。分解してみないことには分かりませんが、おそらくこの付近に基板があり、その上にある様々なパーツが発熱しているだけであって、バッテリーそのものはもう少し低い温度が保たれているのではないかと考えられます。少なくとも、旧モデルではそれに近い構造となっていました(ChargerLAB 2022)

2つのポートを使って170W充電をする際、気になるのが電力制御です。図 15に示した通り、だいたい同じくらいの電力を要求し片方では18V4A, もう片方では19V4A程度で150W超える電力で充電されていました。 PDOは充電器側が提示した20V5Aを要求している様子を確認できました(図 17)。

図 17: キャプチャしたPDO

続いて、Baseus 100W PD 充電器CCGAN100CSを用いて100Wで充電した時の電力推移と発熱です。 AVHzY CT-3が周期性を持った荒ぶりを見せたせいでグラフがすごいことになっていますが、この乱高下を無視すれば、一貫して19V4.8Aほどで充電されていることが分かります(図 18)。また、0→100%の満充電までにかかった時間は1時間7分ほどでした。

ベッドの上という割と放熱的には酷い環境でしたが、本体温度も41.9℃ほどで(図 19)、バッテリー温度も最大43℃と、当然とは言え170W充電時よりも低く抑えられています(図 20)。 (図 19図 20は同時に測定したわけではないこと、サーマルカメラの結果はあくまで目安であることを留意しておいてください。)

Anker Prime Power Bank(27650mAh 250Wモデル)100W充電
AVHzY CT-3を用いて筆者測定
電圧・電流の乱高下はCT-3による影響(アーティファクトではない)
図 18: Baseus 100W PD 充電器CCGAN100CSを用いて100W充電をした様子

図 19: サーマルカメラ(FLIR ONE Gen3)を用いての測定(100W充電時)
図 20: Ankerアプリでの電力及び温度

出力について

AVHzY CT-3を用いて調べたところ、本製品(Anker Prime Power Bank 27650mAh 250Wモデル)は、以下の出力が可能だということが分かりました(表 3)。公式サイトのスペックシートに乗っていませんが、USB PD PPSにも対応しています

表 3: 出力(バッテリーからの充電)スペック
ポート スペック W数 備考
USB-C1 or USB-C2

5V⎓3A

9V⎓3A

12V⎓1.5A

12V⎓3A

15V⎓3A

20V⎓5A

28V⎓5A

4.5-21V⎓5A(PPS)

15W

27W

18W

36W

45W

100W

140W

22.5-105W

-

-

-

筆者確認

-

-

-

筆者確認

USB-A

5V⎓3A

9V⎓2A

10V⎓6.5A

12V⎓1.5A

15W

18W

65W

18W

-

-

要OPPO対応機器と専用ケーブル

-

急速充電リスト

USB PD PDO
図 21: AVHzY CT-3を用いて調べたTypeCポートの出力スペック(付属のUSB PD EPR対応ケーブルでテスト)

USB-Aポートの急速充電リスト
図 22: AVHzY CT-3を用いて調べたTypeAポートの出力スペック

なお、上記の表は1ポートのみを使用した時のものです。図 8に示した通り、複数ポートを利用する際にはUSB-C1ポートを除いて出力に制限がかかります。とは言っても、3ポート(つまり全てのポート)を利用した場合にUSB-C2ポートの最大出力が92Wまでに制限されること以外は制限らしい制限もなく、ほとんどの製品はフルパワーで充電されると思います。(USB-Aでの65W充電は、OPPOの一部の対応製品と専用ケーブルを使ってのみ可能なので考慮していません)

また、要旨やSection 6-2で述べた通り、USB-Aポートを使用しない限り機器の追加接続及び取り外しに伴う瞬断(瞬停)は発生しませんでした。これは、使用している機器が100W以下の電力しか要求せず、PDO(供給できる電力のリスト)の再設定が必要ないからだと考えられます。USB-C2ポートで140W充電をしている時にUSB-C1ポートを使用した場合どうなるかは分かりません。

まとめ

寸法もバッテリー容量も取り回しの良いギリギリのサイズを保ちつつ、USB-C1, C2で同時に140W, 100Wを出力可能というハイスペックな仕様で重さや細々とした欠点をすべて帳消しにする最強のモバイルバッテリー。また、大容量にもかかわらず超急速充電が可能で、100W級も充電器を使えば70分で満充電可能。(100W級の充電器を複数台持っている逸般人は2台使っての170W充電をすることで40分未満で満充電が可能)

スマートフォンとBluetooth接続して細かな設定が行える他、本製品を鳴らして探すことも可能ですが、Bluetooth接続していないと使えないため実用性は乏しく、同社の紛失防止トラッカーのような利便性はないのが残念。

最強のモバイルバッテリーとして強くオススメできる最高の1台ではあるものの、万人にオススメするには流石にオーバースペック。 これにロマンを感じ、お財布がそれを許すのであれば、後悔させることはないでしょう。

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参考文献

ANA 「【国内・国際線/海外ツアー】リチウムイオン電池が内蔵された一般電子機器・モバイルバッテリーの取り扱いについて」、 ANA、閲覧日 2024年3月10日、 https://ana-support.my.site.com/jajp/s/article/answers6174ja
@hanpenblog (2021) 「CIO SMARTCOBY 20000mAh 60Wは3Aケーブルでも5Aの出力を通知する仕様違反の製品」、 HanpenBlog、2021年10月30日、閲覧日 2024年3月10日、 https://hanpenblog.com/16964
アンカー・ジャパン株式会社 (2023a) 「Anker史上最高峰の充電器シリーズ「Anker Prime」を発表。超高出力USB急速充電器やモバイルバッテリー等8製品を展開開始」、 2023年8月2日、閲覧日 2024年3月10日、 https://www.ankerjapan.com/blogs/news/426
SpecWerkz & Brad Saunders (2023)USB Type-C® Cable and Connector Specification Release 2.3, USB Implementers Forum
アンカー・ジャパン株式会社 (2024) 「Anker Prime Power Bank (27650mAh, 250W)」、 Anker Japan、2024年、閲覧日 2024年3月10日、 https://www.ankerjapan.com/products/a1340?variant=43742910611617
山田祥平 (2019) 「とにもかくにもType-C、Galaxy Note 10+が示す急速充電の方向性」、 PC watch、2019年11月9日、閲覧日 2024年4月12日、 https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/config/1217555.html
アンカー・ジャパン株式会社 (2022a) 「スマホの充電は正しくできてる?みんなが気になるバッテリーの疑問10選)」、 ANKER MAGAZINE、2022年9月5日、閲覧日 2024年4月12日、 https://www.ankerjapan.com/blogs/magazine/tips-of-battery
アンカー・ジャパン株式会社 (2022b) 「Anker 737 Power Bank (PowerCore 24000)」、 Anker Japan、2022年、閲覧日 2024年4月12日、 https://www.ankerjapan.com/products/a1289
アンカー・ジャパン株式会社 (2023b) 「Anker Prime Power Bank (20000mAh, 200W)」、 Anker Japan、2023年、閲覧日 2024年4月12日、 https://www.ankerjapan.com/products/a1336
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