要旨
これは、筆者作成のCSLファイルの使い方や動作説明をした記事です。
CSL(Citation Style Language)とは、参考文献リストであるBibTeX(.bib)ファイルを元に引用や参考文献のフォーマットを定義したもので、これを用いることで引用・参考文献書式が自動で適切な形に整えられます。
このCSLの最大の特徴は、従来のCSLでは難しかった英語と日本語の文献を同時に扱うことができる点にあります。
なお、英語か日本語か(英語の書式を使うか日本語の書式を使うか)の判別は、BibTeXファイル(.bib)のnoteフィールドが空か否かで判断しているため、noteに何かを記入すると、日本語であると判断されてしまいます。ですので、文献管理ソフト(Zotero等)で注釈を入れる際にはnoteフィールドをmemoに置換するなどしてください。また、動作確認はQuarto ver1.4以降でのみ行っております。ZoteroではCSLがうまくインポートできませんでした。
背景
論文はもちろんのこと、レポートであっても参考文献の明示及び体裁は重要です。これを適切に行うには①文献管理, ②体裁の整えという2つの作業が必要になります。ただでさえ、レポートを書くための資料探しですら大変なのに(そしてレポートを書くのも大変なのに)、こうした事務作業はもはや苦痛です。
上記のうち、①に関しては、Google Driveを活用した有償のPaperpile, 大学・ラボがリッチで契約済みだったり、あるいは6万円をポンと出せる富豪であればEndNoteといった文献管理ツールがあります。もちろん、Mendeleyや、筆者イチオシのZoteroといった無料の文献管理ソフトもあるので、文献管理ソフトが使えこなせれば幾分か楽になります。(フォルダ整理・分類問題といった地獄もありますが)
しかし、②の体裁を整えるという作業は非常に面倒なものです。しかも、掲載するジャーナルによって微妙に引用や参考文献の書式が異なるという面倒臭さがあります。
IEEE形式などの例を貼る
ただ、ありがたいことに、海外のジャーナルの多くは、参考文献ファイルであるBibTeX(.bibファイル)を元にそれらを自動で整えてくれるCSLを提供しています。そのため、引用する論文が英語のみであれば、これで万事解決です。筆者愛用のQuartoを使えば、参考文献ファイル(.bib)とその書式設定ファイル(.csl)を指定すれば、自動的にその書式へと整えてくれます。また、文献管理ソフトのZoteroも拡張機能等でWordやGoogleドキュメントに対して同様のことをしてくれます。
そう、英語のみであれば。
英語のみであれば、問題はないのです。しかし、そこに日本語の文献が混ざると地獄の門が開きます。
恥ずかしながら、筆者は筆頭著者として海外のジャーナルに論文を出したことがないので、海外のジャーナルにおいて日本語文献の扱い(無理やり英訳するのか日本語を混ぜていいのか)が分からないのですが、日本語の論文では英語の文献は英語で, 日本語の文献は日本語でそれぞれ引用及び参考文献リストを作成し整える必要があります(戸田山 2022)。
これは、論文だけでなく学生のレポートも同様でしょう。もちろん、担当教員によってレポートの評価の仕方はマチマチで、「とりあえず引用箇所と文献を明示していればOK, 体裁が整っていなくても減点しないよ」という人もいれば、「(レポートの書き方なんで教えてないにも関わらず)大学生にもなってまともにレポートも書けんのか。嘆かわしい」と、引用・参考文献スタイルが整っていないことで減点をする人もいるでしょう。
もちろん、減点されるか否かに関わらず、提出するのであれば(そしてその作業が面倒でないならば)体裁の整った美しいレポートに仕上げたいと思うことでしょう。少なくとも筆者はそういう人間でした。
しかし、ただでさえ締め切りがギリギリなのに、チマチマと引用・参考文献スタイルを整えている暇などありません。そこで、筆者は日英混合の参考文献ファイル(.bibファイル)に対して、英語と日本語それぞれに自動でスタイルを整えてくれるCSLを作成することにしました。
これを使うことで、レポートを出力する際に、一発で体裁が整います。手動で整えても何も良いことはありません。皆様をこの苦行から解放するために、このCSLを無料で公開し、その解説記事を作成した次第であります。
書式判別例:
"Sample_BibTeX.bib
@article{EN1, % 英語と判断される
author = {Turing, Alan M.},
title = {Computing Machinery and Intelligence},
journal = {Mind},
year = {1950},
volume = {59},
number = {236},
pages = {433--460},
doi = {10.1093/mind/LIX.236.433},
publisher = {Oxford University Press}
}
@article{JP1, % 日本語と判断される
title = {マグカップの妖精は存在するのか?食器の自動洗浄実験},
volume = {1},
url = {https://ojs33.crossref.publicknowledgeproject.org/index.php/test/article/view/9},
DOI = {10.5555/2014-04-01},
number = {1},
journal = {心理陶磁学誌},
author = {山田, 花子 and 鈴木, 一郎},
year = {2008},
month = {Feb.},
note = {japanese}
}
@book{EN2, % noteフィールドがないので英語と判断される
author = {J.K. Rowling},
title = {ハリー・ポッターと賢者の石},
translator = {松岡, 佑子},
publisher = {静山社},
year = {1999},
URL = {https://library.sapie.or.jp/cgi-bin/CN1MN1?S00101=J00DTL04&S00222=2888690},
}
@book{JP2, % noteフィールドが空ではないので日本語と判断される
author = {Antoine de Saint-Exupéry},
translator = {Katherine Woods},
title = {The Little Prince},
publisher = {Harcourt, Brace & World},
year = {1943},
address = {New York},
isbn = {978-0156012195},
URL = {https://amzn.asia/d/5sXCo83},
note = {星の王子さまの英語版}
}@EN1はnoteフィールドがないため、英語の書式が適用されます(Turing 1950a)。@JP1はnoteフィールドが未入力ではないため、日本語の書式が適用されます(山田・鈴木 2008a)。@EN2は日本語で書かれているものの、noteフィールドがないため英語の書式が適用されます(Rowling 1999a)。@JP2は英語で書かれているものの、noteフィールドが未入力ではないため、日本語の書式が適用されます(Saint-Exupéry 1943a)。
Alan M. Turing (1950a)“Computing machinery and intelligence”, Mind, vol. 59, No. 236, pp. 433–460
山田花子・鈴木一郎 (2008a) 「マグカップの妖精は存在するのか?食器の自動洗浄実験」、 『心理陶磁学誌』 、 第1巻1号
J. K. Rowling (松岡佑子 Tran.) (1999a)ハリー・ポッターと賢者の石, 静山社
Antoine de Saint-Exupéry (Katherine Woods訳) (1943a) 『The little prince』、 Harcourt, Brace & World
学術論文(article-journal)の確認
引用部は (著者の姓 出版年) とし、参考文献欄は
英語の場合、
著者(出版年) “論文タイトル”, 投稿したジャーナル名, vol.
n, No.m, pp.最初のページ数-最後のページ数
日本語の場合
著者(出版年) 「論文タイトル」、 『投稿したジャーナル名』、 第
n巻m号、 pp.最初のページ数-最後のページ数
とする(戸田山 2022)。
学術論文の場合は、DOI(Digital Object Identifier; デジタルオブジェクト識別子)が付けられることが一般的なため、論文タイトルをそのDOIのURLにすることが多い。
英語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(Turing 1950b)となり、2人では&で繋ぐので(Shannon & Weaver 1948)となる。3人以上はet alとする(Kernighan et al. 1978, Berners-Lee et al. 1992)。 なお、このet alをitalic (斜体)にしたいのだが、何をどう頑張ってもできない。
日本語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(山田 2008)となり、2人では・で繋ぐので(山田・鈴木 2008b)となる。3人以上はらとする(照井 ら 2222, 山田 ら 2008)。
雑誌(article-journal)の確認
引用部は (著者の姓 出版年) とし、参考文献欄は
英語の場合、
著者(出版年) “論文タイトル”, 雑誌名, vol.
n, No.m, pp.最初のページ数-最後のページ数
日本語の場合
著者(出版年) 「論文タイトル」、 『雑誌名』、 第
n巻m号、 pp.最初のページ数-最後のページ数
とする(戸田山 2022)。
英語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(Gladwell 2000)となり、2人では&で繋ぐので(Friedman & Mandelbaum 2010)となる。3人以上はet alとする(Lewis et al. 2009, Silver et al. 2020)。 なお、このet alをitalic (斜体)にしたいのだが、何をどう頑張ってもできない。
日本語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(吉田 2000)となり、2人では・で繋ぐので(吉田・西 2000)となる。3人以上はらとする(吉田 ら 2000a, 2000b)。
新聞記事(article-newspaper)の確認
引用部は (著者の姓 掲載年) とし、参考文献欄は
英語の場合、
著者(掲載年) “論文タイトル”, 新聞名, 掲載年, 掲載ページ
日本語の場合
著者(掲載年) 「論文タイトル」、 『新聞名』、 掲載年、 掲載ページ
とする。
英語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(Kristof 2019)となり、2人では&で繋ぐので(Haberman & Baker 2020)となる。3人以上はet alとする(Davis et al. 2020, Mazzetti et al. 2019)。 なお、このet alをitalic (斜体)にしたいのだが、何をどう頑張ってもできない。
日本語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(安藤 2019)となり、2人では・で繋ぐので(安藤・尾和 2019)となる。3人以上はらとする(安藤 ら 2019, 和田 ら 2019)。
Webページ(webpage)の確認
引用部は (著者 掲載年) となる。掲載年とするか、最終更新年とするかは悩ましいところで、どちらを採用するにしてもレポート・論文内ではどちらかに統一すべきである。なお、Webページによっては公開年(最終更新年)が不明な場合もある。その場合は(n.d.)(no dateの略)を用いる。
参考文献欄は、英語の場合、
著者(掲載年) “Web記事タイトル”, Webサイト名, 掲載日, Accessed
閲覧日.URL
日本語の場合は、
著者(掲載年) 「Web記事タイトル」、 Webサイト名, 掲載日, 閲覧日
閲覧日.URL
とするのが、適切だと考える。特に閲覧日は重要なので必ず記載したい。そのため、.bib(BibTeX)ファイル に urldate としてYYYY-MM-DDの形で入力すること。(dateは公開日もしくは最終更新日を入力)
@online{Key,
author = {姓, 名},
title = {Web記事のタイトル},
date = {2020-11-12},
url = {https://example.com/},
urldate = {2024-02-09},
publisher = {Webサイト名},
note = {japanese}
}英語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(Rosenberg 2020)となり、2人では&で繋ぐので(Harari & Keydar 2019)となる。3人以上はet alとする(Markoff et al. 2021, Silver et al. 2018)。 なお、このet alをitalic (斜体)にしたいのだが、何をどう頑張ってもできない。
日本語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(北原 2020)となり、2人では・で繋ぐので(森川・緒方 2020)となる。3人以上はらとする(北原 ら 2020a, 2020b)。
書籍(book)の確認
引用部は (著者の姓 出版年) とし、参考文献欄は
英語の場合、
著者(出版年), 書名, 出版社
日本語の場合
著者(出版年) 『書名』、 出版社
とする(戸田山 2022)。英語の場合は(出版年)の後に,が付く。
英語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(Harari 2015)となり、2人では&で繋ぐので(Friedman & Mandelbaum 2011)となる。3人以上はet alとする(Piketty et al. 2014)。 また、翻訳された本については(Saint-Exupéry 1943b)とする。
日本語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(秋山 2001)となり、2人では・で繋ぐので(秋山・☆ 1999)となる。3人以上はらとする(秋山 ら 1998)。 また、翻訳された本については(Rowling 1999b)とする。
単行本に収録されている論文(chapter)の確認
引用部は (著者の姓 出版年) とし、参考文献欄は
英語の場合、
論文著者(出版年) “論文タイトル”, 編者
ed.書名, 出版社, pp.最初のページ数-最後のページ数
日本語の場合
論文著者(出版年) 「論文タイトル」、 編者
編、 『書名』、 出版社、 pp.最初のページ数-最後のページ数
とする(戸田山 2022)。
英語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(Dawkins 2000)となり、2人では&で繋ぐので(Axelrod & Hamilton 1981)となる。3人以上はet alとする(Kahneman et al. 2000, Latour et al. 1999)。
日本語文献の確認
著者が1人の場合の引用は(秋山 2014)となり、2人では・で繋ぐので(山田・鈴木 2000)となる。3人以上はらとする(山田 ら 2000)。